この照らす日月の下は……
20
「今度の長期休み、一緒に来ないか?」
来るよな、と言外に告げながらアスランはキラに問いかける。
「僕、もう予定があるの」
しかし、キラはきっぱりとした口調でそう言う。
「しばらく会えなくなる人がいるから、会いに行かないと行けないの」
だから、アスランにはつきあえない。キラの唇から出たのは想定外のセリフだ。
「キラ!」
「パパもママも『行っておいで』って言ってくれたもん」
それなのに、とキラは首をかしげる。
「どうしてアスランが僕が決めたのことに文句を言うの?」
その言葉の裏に拒絶が含まれているような気がするのは錯覚ではないだろう。
「どうしてって……僕が一緒にいたいからだよ」
それでもキラなら許してくれるはずだ。そう思って言葉を綴る。
「アスランとは学校が始まればまた会えるでしょう? でも、お兄ちゃんとはひょっとしたらもう会えなくなるかもしれないんだ」
どちらを優先するか、決まっているではないか。キラの瞳がそう告げている。
しかし、アスランには納得できない。
「でも、キラと一緒に家に行けるのは今回だけかもしれないし」
レノアは何も教えてくれないが、周囲の様子がおかしい事ぐらいはアスランにだってわかる。そうなれば、プラントの人間ではないキラを連れて行けなくなるかもしれない。
その前に、と思ってはいけないのか。
最近は自分とキラの間に割り込もうとしてくるものも多いし、とそう心の中で付け加える。
だから、邪魔者が入らない場所にキラを連れていきたいのだ。
しかし、先手を打った人間がいる。
その人間からすれば自分が邪魔者なのだろう。
「……あいつめ……」
キラに影響力を持ち、なおかつ自分を邪魔だと思っている人物が誰か。アスランにはすぐにわかった。
しかし、だ。
キラにそれを指摘するのは逆効果だろう。今だって、最初から聞く耳を持たないのは《家族》が関わっているからだ。
カリダとハルマはまだいい。それ以外の者達はキラのそばに必要ないような気がする。
どうすればあいつらからキラを引き離せるのか。
それを考えなければいけない。
「キラには僕だけでいいのに」
アスランは口の中だけでつぶやく。しかし、そのための方法は見つからない。
「何か言った?」
声が届いたのか。キラはこう問いかけてくる。
「気のせいだよ」
なんとか表情を取り繕うとアスランは言い返す。
「それよりも、本当にだめ? 来年はだめな可能性が高いんだけど」
「ごめん。でも、本当に兄さんとは次にいつ会えるかわからないから」
メールも状況次第では出来なくなるかもしれない。だから、とキラは頑として譲らない。
「兄さん達は、パパとママのそばにいられなかったときに代わりにそばにいてくれたんだもん。だから、ちゃんと『行ってらっしゃい』って言わなきゃいけないの」
そして、会えなくなる分、甘えてこないといけないのだ。さらにキラはそう続ける。
「アスランは友達だけど、でも、今は兄さん達なの」
それがだめならお友達やめるとまで言われては折れないわけにいかない。
だが、いずれ自分を優先させてやるとアスランは心の中で誓っていた。